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2025/12/09

4つ目の爆弾。会計不正・管理会社とのトラブル

「お金の流れ」が見えなくなったとき、マンションは一気に危険になる

ここまでで、

  1. 1.修繕積立金が足りない

  2. 2.理事のなり手不足・高齢化で管理組合が回らない

  3. 3.老朽化・空室増加・「準スラム化」のリスク

を見てきました。

4つ目のテーマは、
それら全部の「土台」に関わる話です。

 ④ 会計の不正・不透明さと、管理会社とのトラブル

建物の老朽化よりタチが悪いのは、
「お金がどこにどう流れているかわからない状態」です。

今日は、同じ不安を感じている方に向けて、

  • ・実際にどんなトラブルが起きているのか

  • ・どんなサインが「黄色信号」なのか

  • ・あらかじめ防ぐために、理事会ができること

を整理していきます。


「そんなこと本当にあるの?」という話が、現実に起きている

ニュースや裁判例を見ると、
マンションの会計まわりで、こんなことが現実に起きています。

  • ・理事長や会計担当が、管理組合の口座から私的に引き出していた

  • ・架空の工事をでっち上げて、キックバックを受け取っていた

  • ・管理会社が相場よりかなり高い見積もりで工事を回し続けていた

  • ・管理会社が「善管注意義務」を果たさず、ずさんな会計処理をしていた

もちろん、
まじめに仕事している管理会社・理事会の方が圧倒的に多いです。

でも、

 「うちは大丈夫だろう」でノーチェックにしていると、
 気づいたときには取り返しのつかない額になっていた

…というパターンは、実際にあります。


なぜ会計不正が起きるのか? 3つの構造的な理由

ここで大事なのは、
「人間性が悪かったから」だけで片付けないことです。

会計不正が起こりやすい構造には、
次の3つがあります。

1. お金の動きを見ている人が少なすぎる

  • ・通帳やネットバンキングにアクセスできるのが理事長だけ

  • ・会計報告は年1回の総会で、細かいところは誰も見ない

  • ・領収書や明細は、理事長や管理会社が“持ちっぱなし”

こうなると、

 「やろうと思えば、不正ができてしまう環境」

が自然にできあがります。

2. 理事会に会計・契約の「プロ」がいない

  • ・工事の相場が分からない

  • ・管理委託料が他と比べて高いのか安いのか分からない

  • ・見積書を見ても、どこをチェックすればいいか分からない

その結果、

  • ・管理会社から出された数字を“信じるしかない”状態

  • ・一部の人の判断に依存してしまう

これも、悪意がなくても「高止まり」「ムダ工事」が続く温床になります。

3. 「管理会社=全部やってくれる人」という誤解

本来、管理会社は

  • ・管理組合の“委託先”であって

  • ・上に立つ“親分”ではありません。

ところが現場では、

  • ・「うちのことは全部管理会社に任せてますから」

  • ・「管理会社が言うなら間違いないでしょう」

という空気が強く、
チェック機能が完全に止まっているマンションも少なくありません。


こんなサインが出ていたら、要注意

いきなり不正を疑う必要はありませんが、
「このあたりは黄信号」と思っていいサインを挙げます。

サイン1:決算書が、やけにざっくりしている

  • ・「管理費」「修繕費」などの大きな科目だけで、内訳が見えない

  • ・大きな工事があったのに、その詳細が決算書に書かれていない

  • ・「前期繰越」「当期繰越」だけで、途中の動きが説明されない

こういう時は、

 「見せている情報」と「実際の動き」にギャップがある可能性

を疑った方がいいです。

サイン2:理事会・総会で、数字の質問が出ない/出せない空気

  • ・「難しい数字の話はいいですよ」と、誰も聞きたがらない

  • ・管理会社の担当者の説明が早口&専門用語だらけ

  • ・質問しようとした人が、場の空気で黙ってしまう

数字を質問しなくなった瞬間、
会計は一気に「ブラックボックス」になります。

サイン3:同じ業者にばかり発注が続き、見積もり比較がない

  • ・大規模な工事でも、毎回同じ会社に“当然のように”決まる

  • ・見積もりが1社だけ

  • ・理事会の議事録に「なぜその業者にしたか」の理由が書いていない

必ずしも不正とは限りませんが、

 「相見積もりを取っていない」
 「競争原理が働いていない」

状態が続くと、
割高な工事が積み上がっていきます。

サイン4:管理会社が、資料の開示やコピーにやたら消極的

  • ・通帳コピーや明細の提供をお願いすると、露骨に嫌な顔をする

  • ・電子データでの提供を拒み、紙で閲覧だけと言う

  • ・「それは理事長さんだけに」「それは総会に出した分だけで十分です」

正当な理由がある場合もありますが、
この態度が続くマンションは、
「見られて困るものがあるのでは?」と疑ってもいいラインです。


事前にできる「防止策」5つ

では、どうやって会計不正を防ぐか。

ここで必要なのは、
「人を信用しない」ことではなく、
「仕組みで守る」発想
です。

防止策1:お金は必ず「分別管理」を徹底

  • ・管理費会計と修繕積立金会計は、口座も帳簿も完全に分ける

  • ・管理会社の口座と、管理組合の口座を混在させない

ここは基本中の基本です。

「管理会社名義の口座にまとめて入れておきます」は、
どれだけ相手を信用していてもNGです。

防止策2:通帳・明細・ネットバンキングの「複数閲覧権限」

  • ・通帳や明細を見られる人を、理事長1人に限定しない

  • ・副理事長・会計担当・監事など、最低2〜3人は閲覧できるようにする

  • ・ネットバンキングのID・パスワード管理も、分散して行う

「見る人を増やす」だけで、
不正のハードルは一気に上がります。

防止策3:予算と実績を“毎回”照らし合わせる

  • ・年1回の決算だけでなく、
     3ヶ月〜半年に1回は、理事会で収支報告をチェックする

  • ・「予算:○○円だった項目が、実績で△△円になっている」

  • ・「大きな差があるなら、その理由を確認する」

これを続けていくと、

  • ・毎年同じ項目が予算オーバーになっている

  • ・特定の業者への支払いが増え続けている

といった“クセ”が見えてきます。

防止策4:工事は「設計(仕様書)と施工」を分けて考える

大規模修繕などの高額工事ほど、

  • ・設計・監理(工事の内容を決めてチェックする人)

  • ・施工(実際に工事をする会社)

を分ける方が安全です。

  • ・「工事会社が自分で仕様を決めて、自分で見積もりして、自分で施工する」

  • ・しかも相見積りなし

このセットは、
割高・不透明・トラブル予備軍になりやすい形です。

防止策5:監事や第三者の「チェック役」を本気で機能させる

  • ・監事には、ちゃんと数字を見れる人・見ようとする人にお願いする

  • ・年に1回は、会計士・マンション管理士など第三者にスポットチェックを依頼する

  • ・「おかしいところがあれば、管理会社にも理事長にも遠慮なく突っ込んでほしい」と事前に伝えておく

「何も問題が見つからなかった」という結果が一番いいのですが、
それを証明するためにも、定期的な外部チェックは価値があります。


それでも「怪しい」と感じたら、どう動くか

「もしかして、うちはすでに…?」
そう感じている方もいるかもしれません。

そのときに、
いきなり管理会社を敵に回すと、
話がこじれて前に進まなくなります。

順番を意識するのが大事です。

① まず理事会の中で「事実確認」を徹底

  • ・決算書・通帳・明細・工事見積もり・請求書などを揃える

  • ・「数字だけ」でおかしな点を洗い出す

  • ・感情的な言葉ではなく、「事実としての矛盾」を整理する

ここを曖昧なまま「怪しい」と騒ぐと、
逆にこちら側が不利になります。

② 管理会社に対して、書面で説明を求める

  • ・理事会名義で、具体的な点を整理して質問状を出す

  • ・口頭説明だけで終わらせず、回答も書面でもらう

  • ・可能なら、そのやり取りを議事録に残しておく

これで説明がつくケースもありますし、
逆に説明が苦しい場合は、それも記録として残ります。

③ 第三者(マンション管理士・弁護士・会計士)に相談する

  • ・「どこまでが許容範囲で、どこからがアウトか」

  • ・「契約違反・法令違反にあたるのかどうか」

これは、素人判断では難しい分野です。
早めにプロの目を入れた方が、
結果的に安く・早く終わることも多いです。

④ 管理会社の変更も選択肢に入れる

  • ・説明責任を果たさない

  • ・明らかなミス・不誠実な対応が続く

こういう場合は、

 「どう改善してもらうか」だけでなく、
 「そもそも委託先を変える」という選択肢

も視野に入れるべきです。

ただし変更には、

  • ・新しい管理会社の選定

  • ・契約条件の比較

  • ・引き継ぎの段取り

など手間もリスクもあるので、
冷静にメリット・デメリットを比較する必要があります。


「疑うために見る」のではなく、「守るために見る」

会計不正や管理会社とのトラブルの話をすると、
どうしても空気がピリピリしがちです。

でも、本当に大事なのはここです。

 決算書や工事費をチェックするのは、
 「誰かを疑うため」ではなく、
 「みんなのお金と資産価値を守るため」。

  • ・管理会社の担当者だって、
    きちんとチェックしてくれる理事会の方が仕事はしやすい。

  • ・理事長だって、
    一人で背負うより、数字を一緒に見てくれる仲間がいた方が心強い。

監視ではなく、健全な「見張り」です。


いま、不信感で疲れている理事さんへ

「なんとなく、お金のことをまかせきりで怖い」
「管理会社を疑っている自分がイヤになる」
「総会で質問すると、嫌な顔をされてつらい」

そんな気持ちを抱えている理事さんもいると思います。

でも、忘れないでください。

 会計や工事の中身を知ろうとするのは、
 わがままでも、ケチでもありません。
 「自分の家のお金の流れを知りたい」と思うのと同じ、ごく自然な感覚です。

あなたが数字に目を向けることは、
マンション全体にとっての防波堤になっています。


次回は「⑤ 建替え・長寿命化工事の合意がまとまらない」へ

ここまでで、

  1. 修繕積立金

  2. 理事のなり手不足

  3. 老朽化・準スラム化

  4. 会計不正・管理会社とのトラブル

と、「マンション運営の4つの地雷」を見てきました。

次は、
その集大成ともいえるテーマ――

⑤ 建替え・長寿命化工事の合意がまとまらない問題

について、

  • ・どうして合意形成がこんなに難しいのか

  • ・「建替え vs できるだけ延命」の現実的なライン

  • ・決められないまま時間だけが過ぎていくのを防ぐ方法

を整理していきます。

「うちのマンションも、お金と管理会社のことでモヤモヤしている」と感じたら、
この記事を理事会のメンバーや、関心のありそうな住民にそっとシェアしてみてください。

それだけでも、
“お金の流れを見ようとする人”が一人増えるきっかけになります。

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