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2025/12/08

3つ目の爆弾。老朽化・空室増加・「準スラム化」の不安

前回までで、

  1. 1)修繕積立金が足りない

  2. 2)理事のなり手不足・高齢化で管理組合が回らない

という話をしました。

これら2つの問題を放置すると、
その先に待っているのが、

「老朽化が進み、空室が増え、マンション全体が“準スラム化”していくリスク」

です。

今日は、同じ不安を感じている方に向けて、

  •  ・何が起きたら黄色信号・赤信号なのか

  •  ・そこから「坂道を転げ落ちない」ために何ができるのか

を、できるだけ具体的に整理してみます。


「準スラム化」って、どういう状態?

ニュースなどでも、

  •  ・老朽マンション

  •  ・管理不全マンション

  •  ・空き家マンション

という言葉が出てきますが、
イメージとしてはこんな状態です。

  •  ・外壁が汚れ・ひび割れ・錆びでボロボロ

  •  ・エントランスや廊下の照明が暗く、壊れても放置

  •  ・共用部にゴミや私物が放置されている

  •  ・エレベーターや設備の故障が増える

  •  ・空室や賃貸の入れ替わりが激しくなり、「短期入居者」ばかりになる

  •  ・住んでいる人のモラルが落ち、騒音・ゴミ・違法駐車などのトラブルが増える

ひと言でいうと、

 「なんとなく、近寄りたくない雰囲気のマンション」

これが“準スラム化”の実態です。

ここまで来ると、

  •  ・売ろうと思っても買い手がつかない

  •  ・買い手がついても価格が想像以上に安い

  •  ・ローン審査も厳しくなる

という、「出口が細くなる」状況に入っていきます。


どうしてそうなるのか? 3つの悪循環

「うちのマンションも、将来そうなるのでは…」
と不安になる前に、
まず仕組みを冷静に見てみましょう。

大きく分けると、原因は3つです。

1. 「お金」の悪循環

  •  ・修繕積立金が足りない

  •  ・長期修繕計画を見直してこなかった

  •  ・大規模修繕のタイミングを逃した

その結果、

  •  ・外壁・防水・配管・設備の劣化が目に見えて進行

  •  ・「このマンション、ぼろいな」という印象になり、
     買い手・借り手が減る → 空室が増える → 収支がさらに苦しくなる

というループに入ります。

2. 「人」の悪循環

  •  ・理事のなり手がいない

  •  ・高齢の理事長が一人で抱え込んでいる

  •  ・面倒そうな議題(値上げ・大規模修繕・ルール変更)ほど先送り

すると、

  •  ・トラブル対応が遅れる

  •  ・不良入居者が居座る

  •  ・ルール違反を注意できる人がいない

結果として、
真面目な住民ほど「もう引っ越そうか」と考え、
モラルの低い層だけが残りやすくなります。

3. 「ルール」の悪循環

  •  ・管理規約が古いまま

  •  ・民泊・ペット・楽器・EV充電など新しいテーマに追いついていない

  •  ・ゴミ出しや駐輪場のルールも曖昧

こうなると、

  •  ・“グレーゾーン”を突いた行為が増える

  •  ・注意しても「規約に書いてない」と開き直られる

  •  ・結果として、“注意する方”が疲れて去っていく

マンションは「人+お金+ルール」のバランスで成り立っています。
この3つが同時に崩れ始めると、
下りのエスカレーターみたいな状態になっていきます。


「黄信号」と「赤信号」を見極めよう

いきなり崩壊するわけではありません。
多くのマンションには、
わかりやすい「黄信号」「赤信号」のサインがあります。

黄信号レベル(今ならまだ戻せる)

  •  ・大規模修繕の時期が来ているのに、話が進まない

  •  ・修繕積立金の値上げの議論が「毎年流されている」

  •  ・理事会の出席者が毎回ほぼ同じメンバー

  •  ・共用部の小さな不具合(照明1個・床のタイルなど)が長く放置されている

  •  ・ゴミ出しのルール違反が目立ち始めた

この段階はまだ「戻せるゾーン」です。

 「なんとなく荒れてきたな」
 と感じたタイミングで動けるかどうかが、
 将来の分かれ道になります。

赤信号レベル(かなり危険)

  •  ・修繕積立金の残高が、直近の大規模修繕費にも足りない

  •  ・滞納者が目立って増えている

  •  ・管理費の支払い遅延で、管理会社が委託契約の見直しを言い出している

  •  ・空室率が高く、短期賃貸やややグレーな入居者が増えている

  •  ・共用廊下やエントランスにゴミ・粗大ごみ・私物が長期間放置されている

  •  ・夜間、エントランス周りの雰囲気が明らかに悪い(騒音・たまり場化など)

このレベルに入ると、

 「もうやめよう」と考える住民が増え
 「とりあえず安く貸そう」「売り抜けよう」という動きが加速

さらに質の悪い入居者が入りやすくなり、
一気に坂道を転げ落ちます。


そこから戻るために、何ができるのか

「もうダメなのかな…」
と思ってしまうかもしれませんが、
まだできることはあります。

1. まず「現状を見える化」する

  •  ・修繕積立金の残高・今後10〜15年の修繕予定

  •  ・空室率・賃貸化率(投資用として持っている人の割合)

  •  ・滞納の状況

  •  ・設備の更新時期(エレベーター・ポンプ・配管など)

数値で現状を整理しないと、
話し合いは感情論になってしまいます。

「なんとなくヤバい」から抜け出して、

 「あと何年で、どの工事に、いくら必要なのか」
 「そのときに足りない金額はいくらか」

をまず数字にしてしまうこと。

ここからしか、逆転のストーリーは始まりません。

2. 「資産価値」の言葉で説明する

  •  ・見た目が古くなる

  •  ・管理状態が悪くなる

  •  ・空室やトラブルが増える

この状態はそのまま、
マンションの「価格」に跳ね返ります。

理事会で話すときも、

  •  ・「みんなで頑張りましょう」ではなく

  •  ・「今これをやらないと、10年後に売るとき○○万円安くなります」

という説明の方が、
はるかに人は動きます。

  「住み心地」+「出口(売却)の値段」
  この2つをセットで示すことが、
  住民の意識を変える一番のスイッチになります。

3. 「全部は無理」だから優先順位を決める

老朽化が進んでいるマンションほど、

  •  ・やらなきゃいけないことが山のようにあります。

全部を一度にやろうとすると、
お金も人も、確実にパンクします。

だからこそ、

  「絶対に先送りしてはいけないこと」
  「先送りしてもまだ致命傷にならないこと」

を分ける必要があります。

最優先で守るべきは、

  •  ・安全・防犯に関わる部分

  •  ・構造・防水(外壁・屋上・バルコニーなど)

  •  ・法令上の義務(消防・設備点検など)

逆に、

  •  ・美観アップのための装飾タイル

  •  ・過剰な共用施設のリニューアル

  •  ・なくても困らない設備の入れ替え

こういったものは一旦横に置き、
「壊れたら致命傷」になる部分から手を付ける方が現実的です。

4. 「住民の質」を守る仕組みを整える

荒れていくマンションの特徴は、

 「住む人を選ぶ仕組みがない」
 「ルール違反に対して、何もできない」

ことです。

最低限やっておきたいのは、

  •  ・管理規約と使用細則の見直し

    •    ペット・民泊・短期賃貸・ゴミ・騒音・駐輪など

  •  ・ルール違反に対する「段階的な対応フロー」を決める

    •    ①口頭注意 → ②書面通知 → ③内容証明 → ④法的手段の検討

これをきちんと整えた上で、

 「ここは、きちんとルールを守る人のためのマンションです」

というメッセージを出していくこと。

それが、
「いい住民が残りやすい環境」を作り、
結果として資産価値を守ることにつながります。


もしあなたが「今住んでいる側」だとしたら

いま読んでいるあなたが、
そのマンションに実際に住んでいる一人なら

できれば、

  •  ・理事会の議事録を一度、ちゃんと読んでみてください。

  •  ・総会に、一度でいいので参加してみてください。

そこで、

 「このまま行くと本当に危ないな」

と感じたら、
できる範囲で構いません。

  •  ・一年間だけでも理事を引き受ける

  •  ・「資料作りなら手伝えます」と名乗り出る

  •  ・専門家への相談を、理事会に提案する

その一歩は、
マンション全体にとっては想像以上に大きな一歩です。


もしあなたが「投資家として見ている側」だとしたら

これからマンションを買おうとしている人、
すでに投資用に持っている人なら、
見るべきポイントはシンプルです。

  •  ・修繕積立金残高と、長期修繕計画の中身

  •  ・滞納率・空室率・賃貸化率

  •  ・共用部の“空気”と、掲示板の内容(苦情の多さ)

  •  ・理事会や総会がきちんと機能しているか

これらはすべて、

 「このマンションが、
 将来も“まともな資産”として残るかどうか」

の診断材料になります。


おわりに:坂道を“上る側”に回るという選択肢

老朽化・空室増加・準スラム化の話は、
どうしても暗くなりがちです。

でも、覚えておいてほしいのは、

 マンションは、人が諦めたときにだけ、本当に崩れていく

ということです。

  •  ・現状を数字で見える化する人

  •  ・面倒な議題をちゃんとテーブルに乗せる人

  •  ・「資産価値」という言葉で説明しようとする人

こういう人が一人でも増えると、
マンション全体は少しずつ“坂道を上る側”に回っていきます。

次回は、
この「準スラム化リスク」とも密接に関わってくる

 ④ 会計不正・管理会社とのトラブル

について、

  •  ・どこからが「怪しいライン」なのか

  •  ・防ぐためには何をチェックすべきか

  •  ・トラブルになったとき、どこに相談すればいいのか

を整理していきます。

いま心のどこかで、
「うちのマンション、少し危ないかも…」と感じているなら、
それはきっと“早めの黄信号”です。

その感覚を、
どうか無視しないであげてください。

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