「移民モデル」と「不動産業」をつなげて考えてみる
――シンガポールとドバイから見える、日本のチャンスと怖さ―― 前回のブログでは、シンガポールとドバイの「移民モデル」について書きました。 ・シンガポールは「明るい北朝鮮」と呼ばれるくらい徹底した管理社会 その裏側には、 「外国人を“市民”ではなく、“期限付きの労働力”として扱う」 という共通した設計図がありました。 今日はこの話を、不動産業・街づくりの視点につなげて考えてみます。 ------------ 【1】シンガポールとドバイは、「住まい」まで政策で決めている まず押さえておきたいのは、 シンガポールもドバイも、「外国人労働者の住まい」を完全に“制度の中”に組み込んでいる という点です。 シンガポールでは、外国人の低賃金労働者について、 ・雇用主は、政府の定めた基準を満たす住宅に住まわせる義務がある つまり「外国人をどこに住まわせるか」は、 ドバイ(UAE)も同じで、 ・一定人数以上の低賃金労働者を雇う会社は、「労働者宿舎(ラバーキャンプ)」の提供が義務 これって、不動産業の言葉でいえば、 ・「労働力インフラ」としての住宅 というビジネスが、国全体で回っている、ということでもあります。 ------------ 【2】日本は真逆、「空き家だらけなのに受け皿が設計されていない」 一方、日本はどうか。 ご存じの通り、日本には今や約900万戸前後の空き家があると言われ、 将来的には「3軒に1軒が空き家になる」との試算もあります。E-Housing+1 にもかかわらず、 ・外国人労働者や留学生、技能実習生の「住まいの設計」は、ほとんど“個別交渉”任せ というのが正直なところだと思います。 その一方で、海外からは ・格安な空き家を買って別荘・セカンドハウスにする外国人 も増えていて、「日本の空き家」は海外投資家からも注目され始めています。ニュース.com.au+1 ここに、日本の不動産業にとっての“チャンスと怖さ”が同時に存在していると感じます。 ------------ 【3】もし日本が「シンガポール型」「ドバイ型」を真似したら? 極端な仮説として、 「日本もシンガポールやドバイのように、“労働者用ドミトリー”モデルを全面導入したらどうなるか?」 を考えてみます。 例えば、 ・工業団地や物流拠点の近くに、 こういう発想を取れば、 ・通勤時間の短縮 という意味では、メリットは大きいかもしれません。 ただし、そのまま真似すると、 ・「そこに住んでいる人たちは、ずっと“ゲスト”のまま」 という、シンガポール・ドバイ型の“二級市民構造”を再現してしまう危険もあります。 これは、日本の地方都市や住宅地のコミュニティを考えると、かなり重たいテーマです。 ------------ 【4】不動産業として考えたい3つのポイント じゃあ、不動産業として現実的に何ができるのか。 シンガポールやドバイの「制度の見方」だけ借りて、日本らしいやり方を組み立てるとしたら、少なくとも次の3つは意識したいな、と僕は感じています。 (1)「住まいの種類」をはっきり分けて設計する ・長期定住のための“普通の住まい” この3つを、ごちゃ混ぜにしないこと。 「外国人用の部屋」とひとくくりにするのではなく、 (2)空き家・古家を「ワーカー向けレジデンス」として再定義する 地方の空き家や古い貸家を、 ・企業と組んで、技能実習生・特定技能向けのシェアハウス化する といった形で再生できれば、 ・空き家問題 を一気に“1つの案件”として扱える可能性があります。 (3)自治体と一緒に「受け皿エリア」をデザインする 本当は、民間だけでやるのではなく、 ・「このエリアは外国人ワーカーの受け皿として強化する」 といったゾーニングを、自治体と一緒に考えるフェーズに入っていくべきだと思います。 シンガポールやドバイのような強権的なやり方は日本には合わないかもしれません。 「誰が、どこに、どんな住まい方で住むのか」 を放置したまま外国人だけ増やすと、 ------------ 【5】移民問題は「住宅問題」でもある 結局のところ、 ・移民問題 この3つは、バラバラのテーマではなく、 ・どんな人を受け入れるのか これを設計しない限り、 シンガポールとドバイは、その答えとして 「強いルールで、外側に“ワーカーの街”をつくる」 という選択をしました。 日本は、同じルートをそのままなぞる必要はありません。 ただ、 「移民をどうするか?」 と同じくらい真剣に、 「その人たちに、どんな住まいと街を用意するのか?」 を考えなければ、 不動産業は、その「受け皿」を具体的な物件に落とし込む役割を持っています。 移民問題を、 自分が扱っている一棟・一戸・一筆の土地から、 そんな目線で物件を見ると、 |








